この記事では、香川県に導入されるドクターヘリについて紹介していきます。
人気ドラマ「コード・ブルー」を見たことがある人は、ドクターヘリがどのようなものかを知っていると思いますが、実際にドクターヘリが飛んでいる光景を見た人はほとんどいないと思います。
それもそのはずで、香川県ではドクターヘリが現時点で運用されていなかったからです。
「それが普通なんじゃないの?」と思われるかも知れませんが、香川県以外の都道府県では1機以上のドクターヘリが運行しており、香川県が1番遅れているのが現状。
ですが、2022年の4月から香川県でもドクターヘリが運行され始めました。
記事内では
- 香川県で運行されるドクターヘリの詳細
- ドクターヘリの運行によるメリット
- 運用後の状況
について紹介していきます。
「香川に導入されるドクターヘリってどういうものなの?」「導入することによって何が良くなるの?」という疑問を持っている人は参考になると思います。
香川県で導入されるドクターヘリの詳細
香川県では2022年4月18日からドクターヘリが運行開始します。
ドクターヘリは、現場に到着した救急車の医師や、119番通報を受けた消防法部が「救急車だけでは不十分、緊急を要した処置や搬送が必要」と判断した場合に、ドクターヘリに出動出動要請を行います。
そして、出動要請を受けたドクターヘリは現場近くまで急行。
患者を乗せた救急車から、患者を受け渡され、処置をしながら、適切な病院へ向かうという仕組みになっています。
医師が直接現場に行き、すぐに応急措置をできるのが利点。
厚生労働省が調べた「平成18年ドクターヘリの実態と評価に関する研究」 によると、救急車を使った場合に比べて
- 搬送時間(要請から治療開始まで)は27.2分減
- 死亡リスクは39%減
- 重症・後遺症リスクは13%減
とされています。
香川県での運行に関わる病院や運行時間について紹介します。
運行病院・運行会社
ドクターヘリは
- 香川大学附属病院
- 県立中央病院の救命救急センター
の2カ所が一週間ごとに交代しながら基地病院として稼働します。
ヘリコプターの運行や整備は高松市の「四国航空」に委託されます。
導入される機体の性能は以下の通りです。
運用機種 | BK117C-1型 (川崎重工) |
---|---|
巡航速度 | 時速200km |
航続時間 | 2.5時間 |
乗員定員 | 7名 |
最大吊り下げ重量 | 700kg |
運行時間
ドクターヘリは365日、年中無休で運行されます。
運行時間は毎日8:30から17:30または日没まで。
日没が17:30より早い場合は日没時間までとなります。
特別な機体を除き、法律上ヘリコプターは24時間飛ぶことはできません。
有視界飛行が基本なので、日が出ている時間しか飛行することができないからです。
したがって、運行時間内であっても、悪天候で視界が悪い場合は運行はできない決まりとなっています。
ドクターヘリの導入で香川県の搬送率がアップ
ドクターヘリの最大の特徴は機動力。
飛行機のように滑走路も必要なく、エンジンスタートから回転数が一定数以上になりさえすれば、すぐに離陸することが可能です。
ドクターヘリは出動要請を受けて2〜5分ほどで離陸できると言われており、救急車よりも早く現場に急行することができます。
香川県の発表では、出動要請を受けた後、香川県内であればどこにでも20分以内に到着するようです。
時速200kmで目的地へ急行
ドクターヘリなら、時速200kmほどノンストップで目的地へ行けるので、素早く医師と看護師が現場に行くことができます。
そして、必要に応じて患者を大きな病院へ搬送することができます。
救急車の場合、一般道は時速80kmまで出すことが許可されています。
ただし、サイレンを鳴らしながらでも、赤信号の交差点などでは速度を落とす必要がありますし、渋滞に巻き込まれることもあります。
例えば、現場まで50kmまであるとします。
救急車が時速50kmでノンストップで走った場合と、ドクターヘリが時速200kmで向かう場合を比べると、救急車だと1時間のところ、ドクターヘリなら15分で到着します。
不整脈などで心臓が止まった場合(心室細動)、電気ショックが1分遅れるごとに救命率は10%ずつ低下すると言われるほど、早く現場に到着することは大事。
特に山間部では救急車の到着が遅れがち。
山間部だと、現場まで上り坂なのに加え、山間部はカーブが多いため、見通しも悪いので平坦な道と比べてスピードが出せないからです。
その点、ドクターヘリがあれば、道路状況関係なく現場に素早く行くことができます(全国平均で平均14分で到着)。
ヘリポートでなくても離着陸できる
ドクターヘリはヘリポートがない場所でも、緊急離着陸場(ランデブーポイント)に指定された場所であれば、離着陸が許可されています。
例えば、
- 学校のグランド
- 河川敷
- 球場
などです。
香川県の緊急離着陸場に指定されている場所はまだ少ないですが、200カ所を目指しています。
香川は瀬戸内海に浮かぶ島をたくさん抱えています。
小豆島、直島など大きな島は大きな病院がありますが、小さな島だと医療機器が乏しい診療所しかないことも普通。
そのような小さな島の場合は、患者を船で移動することになりますが、波による振動により、患者に負担がかかる場合もあります。
ドクターヘリがあれば、香川県本土から海を越えて島々へすぐに移動でき、医師がすぐに処置することができます。
また、波に比べて、ヘリコプターの振動は患者の負担になりません。
香川県でドクターヘリの導入が遅れた理由
香川県はドクターヘリの導入が全国で1番遅いです。
反対に、瀬戸大橋で繋がっているお隣の岡山県が日本では一番最初に導入。
岡山県では、平成13年(2001年)4月1日から運行が始まっているので、香川県は21年遅れの運行開始ということになります。
なぜこんなにも導入が遅れたのか、その理由を解説します。
面積が狭く、道路が整備されている
香川県は良くも悪くも、全国で1番小さい都道府県。
そして、道路の舗装率は全国トップ3に入ります。
そのため、救急車であっても、全国的に短い時間で現場に急行できたため、ドクターヘリがそこまで必要とされませんでした。
救急車による搬送時間は、2006年は25.2分と全国1位。
2020年は36.7分と全国12位になっています。
維持費が高い
ドクターヘリ1機の年間維持費は約2億円かかると言われています。
実際に、香川県は今年だけで、ドクターヘリの運行事業費として約2億4,550万円を計上しています。
国が9割負担してくれますが、それでも高いですよね。
これは、機体の維持費(メンテナンス・修理)はもちろん、運行時間中にずっと待機させる操縦士2名に、ドクターヘリに乗る医師・看護師の人件費がかかるからです。
距離にもよりますが、1回の出動で約40万円かかります。
香川県でドクターヘリが運用開始された後の状況
香川県でドクターヘリの運用が開始され、たくさんの人に使われています。
ドクターヘリの出動件数は、運用開始後から
- 2022年11月末までで196件
- 2023年2月末までで282件
となり、香川県が想定していた「年間243件」を上回るペースで使われています。
当初の想定通り、瀬戸内海の島を中心に使われています。
約6割が小豆島や直島などの島からの要請です。
広域連携協定をしていく方針
利用される回数が多いため、出動要請が重なることもあり、運用開始から2023年2月末までに出動要請が7件の重複要請がありました。
このような出動要請が重なった場合や、大規模災害が発生した場合に備えて、隣接している県との連携を進めています。
岡山県とは2023年3月に広域連携協定を締結しました。
香川県のドクターヘリが岡山県南にも要請があれば出動する代わりに、岡山県のドクターヘリが香川全域をカバーしてくれます。
さらに2023年6月に開催された四国知事会議で、
- 徳島県
- 愛媛県
- 高知県
とも広域連携協定を締結。
2023年7月1日以降は、香川県のドクターヘリがすでに出動している場合などに、応援派遣されるようになります。
香川県に導入されたドクターヘリまとめ
香川県で導入されたドクターヘリについて紹介しました。
多額のお金はかかりますが、ドクターヘリによって助かる命も増えるはずです。
香川県では年間約250件ほどの出動を予測していましたが、想定以上に利用されてたくさんの人を救っています。
また、患者を運ぶ時以外にも、大きな災害に見舞われ、道路が通行不能になってしまった場合でも、ヘリコプターなら関係なく移動することができるので、万が一の備えにもなります。
今後、香川県の人はドクターヘリの離着陸を見ることがあると思いますよ。